Topics 仮想通貨

暗号資産取引における現物市場とは?

初心者向け
仮想通貨
取引
Sep 18, 2023

はじめに

暗号資産に投資する機関が増えつつある中、当然、暗号資産に関心を持つ人の数も増えています。暗号資産投資・取引を始めるにあたり、一般的にまず、基本事項である暗号資産の売買方法を理解してから、取引を開始するのがよいでしょう。

現物取引は暗号資産取引の最も基本的でシンプルな方法です。はじめて暗号資産取引をする場合、まず現物市場から始めるのが一般的です。通常、暗号資産投資では、暗号資産を長期的に保有しますが、現物取引では、定期的かつ短期的な収益を上げる目的で、様々な暗号資産を売買します。

この記事では、現物取引について学びます。

この記事のポイント:

  • 現物取引とは、取引した暗号資産をすぐに受け渡す意図で、現在の市場価格で暗号資産を売買することです。

  • 現物取引のメリットには、比較的低リスクで方法が分かりやすいことや、価格設定の透明性が高いことがあります。

暗号資産現物取引とは?

現物取引とは、取引した暗号資産をすぐに受け渡す意図で、現在の市場価格(現物価格)で、暗号資産を売買することです。この場合の「受け渡し」とは、購入者と販売者が取引の約束を果たすことを指し、販売者は支払いを行い、購入者は取引した暗号資産を提供します。

現物取引は通常、既存資金を使って現在の市場価格で暗号資産を購入し、価格の上昇を期待して一定期間その暗号資産を保有することで、最終的に暗号資産を販売して利益を実現します。現物取引は、低スプレッドで満期のない短期ポジションを建てることができるため、人気があります。

また現物取引では、暗号資産市場をショートすることもできます。これは、暗号資産を販売し、価格が下がった時に、再度購入することです。

実際に売買される暗号資産を所有できる点は、暗号資産の差金決済取引(CFD)などのデリバティブ取引と異なります。デリバティブ取引では、取引した資産が暗号資産の価格を追跡するだけで、暗号資産を所有することはできません。

暗号資産現物取引の詳細

現物価格とは?

現物価格とは、特定の資産を即座に売買する際の現在の市場相場を指します。

暗号資産通貨ペアとは?

通貨ペアとは、相互に交換可能な資産のことです。暗号資産現物市場には、主に暗号資産対法定通貨のペア(例:ETH/USD)と暗号資産同士のペア(例:ETH/USDT)の2種類の通貨ペアがあります。

注文板とは?

注文板により、特定市場の厚みに関する情報が分かります。ここには特定暗号資産の、未決済の売買注文の一覧がリアルタイムで表示されます。注文板には2つのサイドがあります。

  • バイサイド:最終取引価格を下回るすべての未決済買い注文が表示されます。購入者による提示価格は、「ビッド」と呼ばれます。

  • セルサイド:最終取引価格を上回るすべての未決済売り注文が表示されます。提示された販売価格は「アスク」と呼ばれます。

未決済注文とは、まだ実行されていない未約定注文です。

様々な注文

暗号資産の現物市場で実行できる注文は様々です。

指値注文

指値注文の現物取引では、事前に準備ができます。暗号資産の売買を希望価格(指値価格)を設定することができます。市場価格がその価格に達すれば、トレーダーが指定した条件付き合意に基づき、注文は実行されます。

成行注文

成行注文は現在の市場価格で即時に実行されます。この注文タイプは、可能な限り早く取引注文を完了したい場合に使用します。現物取引では、価格を入力することなく、簡単に発注できます。成行注文が実行されると、資産を最良の現物価格で即時に購入または販売することができます。

特に不安定な暗号資産市場では、注文実行中に市場価格が変化しないという保証はありません。

取引履歴から、自分が行った注文の種類を把握することができます。

メイカー手数料&テイカー手数料とは?

大半の取引所では、現物取引注文ごとに取引手数料が発生します。手数料額はメイカーとテイカーで異なります。

テイカー手数料

テイカーは注文板から流動性を削除するトレーダーです。成行注文をする購入者はテイカーとみなされます。注文が既存の売買提案と即座にマッチする場合は、テイカー手数料が発生します。

メイカー手数料

メイカーとは、注文板の市場の厚みを増やすことで、市場に流動性をもたらすトレーダーのことです。指値注文で事前に取引注文を出すと、メイカー手数料が発生します。

ただし、すべての指値注文にメイカー手数料がかかるわけではありません。例えば、すぐにマッチする注文が見つかった場合、代わりにテイカー手数料が発生する場合もあります。メイカー手数料が発生するように、条件を満たしてもすぐに注文がマッチすることがないように指値注文を出すことができます。

現物取引&マージン取引の違い

現物取引では、手持ちの資金で暗号資産を購入し、取引が実行されればその資産を完全に所有します。 

マージン取引では、暗号資産の購入を完了するためにサードパーティから資金を借り入れます。よって、より多くの数量の暗号資産を購入したり、より高額な取引ポジションを建てたりすることができ、その結果、より大きな収益を得られる可能性があります。しかし、マージン取引で出た損失は、元本以上に膨れ上がる可能性もあるため、よりリスクが高いと考えられます。

さらに、マージン取引では、マージンコールを受けて資産が売却されないように、常に必要証拠金を満たしている必要があります。よって、マージン取引では常に取引を監視する必要があります。さらに、証拠金ローンのコストがかさみ、現物取引よりも、短期間で頻繁に取引をする必要がある可能性もあります。

現物取引と先物取引の違い

現物取引では、購入した暗号資産がすぐに受け渡され、原資産を所有することになります。その後は通常、暗号資産価格が上がるのを待ってから収益に変えます。

一方、先物取引では、原資産を所有しているわけではなく、暗号資産の価値を表す契約を所有しているに過ぎません。先物取引では、購入者と販売者の双方が、将来の特定の価格で一定量の暗号資産を取引することに合意・契約し、その価格で後日取引が行われます。契約が所定の期日に満了すると、購入者と販売者は決済を行います。

現物取引と先物取引の主な違いは、レバレッジの使用にあります。先物取引ではレバレッジを使うことができるので、アカウント残高が少なくてもより高額なポジションを建てることができます。

暗号資産の現物市場

現物市場は前払いで取引するので「キャッシュ市場」とも呼ばれ、株式、債券、外国為替(forex)市場など、様々な資産クラスに対応しています。NASDAQとNYSE(ニューヨーク証券取引所)が2大現物市場です。

暗号資産の現物市場取引の仕組みを理解するために、BTC/USDTの現物通貨ペアを例に考えてみましょう。

1,000 USDTを持つ購入者のAさんが、ユニット価格42,000ドルで相当数量のBTCの買い注文を出します。Aさんは、Aさんの希望するUSDT価格のBTCを提供する販売者のBさんとマッチします。AさんとBさんが、価格に合意すれば、即時に注文が実行・約定されます。

現物市場は一般的に市場センチメントに影響され、ほぼすべての暗号資産の現物価格は、激しく変動します。よって、市場センチメントを理解すれば、現物取引で優位に立てます。

暗号資産は、様々な現物市場があります。これについては次のセクションで説明します。

暗号資産の現物市場の種類

現物市場は、主に取引所とOTC(店頭)取引の2種類の現物市場で行われます。

取引所

取引所は市場の需供が集約されるプラットフォームであり、暗号資産の現物取引で、市場価格にて素早く売買できます。暗号資産の現物市場では、中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)という2種類の取引所があります。

中央集権型取引所

CEXは、現物取引トレーダーと、暗号資産を仲介し、カストディアンとして機能し、取引された暗号資産を管理します。CEXは注文板により、現物トレーダーに販売可能な暗号資産の数量や暗号資産の市場需要に関する情報を提供します。これは、取引可能な市場の流動性の測定に役立ちます。

CEXにおける現物取引では、法定通貨対暗号資産の通貨ペアを利用できます。現物取引は、自身のアカウントに法定通貨または暗号資産を入金するだけで、始められます。

CEXには以下のような特有の責任があります。

  • 円滑な取引の実現

  • プラットフォームセキュリティ

  • 顧客保護

  • 規制遵守

  • 公正な価格設定

  • 本人確認(KYC)

  • マネーロンダリング対策(AML)

CEXは上記のような機能やサービスを提供しているため、CEXでの現物取引には、取引手数料がかかる場合も多くあります。上場やその他の取引活動にも手数料がかかります。よって、CEXでは十分な取引高と利用客がいる限り、市況に関係なく利益を得ることができるのです。

分散型取引所

この種類の取引所は、暗号資産取引に最もよく使われています。DEXは、CEXと同様の機能およびサービスを備えています。しかし、最大の違いは、DEXには仲介者が存在しないという点にあります。購入者と販売者のマッチングはブロックチェーン技術によって行われ、所定のルールに基づいたスマートコントラクトにより、トレーダーのウォレットから直接取引が実行されます。自己実行型コードを使えば、仲介者に委託することなく、取引できます。同様に、取引された暗号資産はCEXが保管する必要がないため、トレーダーが暗号資産の完全な所有権を得ることができます。

DEXを利用する場合、トレーダーはアカウントを作成する必要がなく、本人確認プロセスも不要です。これにより、より多くのプライバシーと自由が守られ、他者と直接取引することができます。しかしその代わり、技術的な問題が発生した場合、本人確認や顧客サポートがないため、多くの場合は立ち往生するはめになります。

DEXの中には、CEXと同様の注文板モデルを採用しているところもあります。この分野で最近開発されたのが、UniswapやPancakeSwapのような自動マーケットメーカー(AMM)モデルです。AMMは数式を使って価格を決定し、流動性プールを利用します。

OTC(店頭)取引

現物取引はOTC取引とP2P取引があり、それぞれにメリットがあります。

OTC取引は、購入者と販売者がサードパーティや取引プラットフォームの監視なしに直接取引を行うため、取引所外取引とみなされます。購入者と販売者は注文板を使わず、市場価格を下回っても上回っても、両者が適切と考える価格で暗号資産を取引することができます。

OTC取引が現物取引で人気がある理由は、以下のようなメリットにあります。

スリッページの減少

注文板を使用すると、特に小型市場規模暗号資産など、流動性の低い暗号資産では、スリッページが発生する可能性があります。その結果、現物取引では希望価格で注文を約定することができなくなります。OTC取引では注文板を使用しないため、現物取引でもスリッページを抑えながら、取引注文を約定することができます。

市場ボラティリティの低減

OTC取引は市場外で行うため、公開市場取引のようにボラティリティを引き起こす心配なく、多数量の取引を行うことができます。

現物取引で収益を上げるには

現物取引では、最大数年間、トークンを保有することができます。そのため、多くのトレーダーがお気に入りの暗号資産を、ドルコスト平均(DCA)法により、現物取引しています。暗号資産が「動かされる」、つまり法定通貨やステーブルコインに変換されて初めて、収益が実現します。また、収益が実現してから、暗号資産は課税対象となりますが、課税対象となる前に、無期限に保有することもできます。

Bybitで現物取引する方法

Bybitで現物取引をしたい方は、以下のガイドを確認してください。

  1. Bybitでアカウントを作成するBybitウェブサイトまたはBybitアプリで登録し、本人確認を行うと、可能な取引高と出入金額を引き上げることができます。

2. 現物取引通貨ペアを利用するには、お好みの法定通貨でBTCまたはUSDTを購入してください。

3. アカウントに入金したら、現物取引に進んで、指値注文、成行注文または条件付き注文を選んで、通貨ペアを取引してください。

4. 現物市場チャートは、資産の過去のデータから成り、データのカスタマイズ、標準表示および詳細表示ができます。チャートには、資産を分析するための様々なテクニカル指標が表示されています。

5. 注文板は情報開示性が非常に高く、売買注文の通知を受け、それに応じてビッド/アスク価格を調整することができます。 

必要な売買情報を入力したら、あとは「BTCを買う」またはお好みのデジタル資産のボタンをクリックして取引を実行するのみです。 

始める前に、現物取引において、Bybitでは取引限度額が設定されていることにご注意ください。例えば、成行注文は、相場操縦を防止するため、注文板の上位10位までのビッド/アスク注文価格でのみ約定します。注文の一部がこの限度額を超えた場合、拒否されます。

すでにBybitデリバティブアカウントをお持ちで、Bybit現物アカウントに入金したい場合は、以下に従ってください。 

Bybitウェブサイト現物取引セクションで「入金」または「振替」をクリックすると「デリバティブ」または「ByFiアカウント」から「現物アカウント」に残高を振替できるぺージに進みます。 

Bybitアプリモバイル画面の右端にある「資産」をクリックし、「現物」アカウントを選択して、ご希望の通貨で入金してください。または、「振替」をクリックして、「デリバティブアカウント」の残高を「現物アカウント」に振替してください。

Bybitの現物取引では、BTC/USDT、BIT/USDT、EOS/USDT、XRP/USDT、ETH/USDT、LINK/USDT、DOGE/USDTなどの15種類の通貨ペアが利用できます。Bybitの現物市場で行ったすべての取引に対し、0.1%のメイカー手数料とテイカー手数料が発生します。 

Bybit現物取引手数料の計算方法

例えば、BTC/USDTの通貨ペアを現物取引するとします。BTCの現在の取引価格が42,000ドルとすると、1 BTCを42,000 USDTで売買できることになります。計算式は以下の通りになります。

取引手数料 = 約定数量 × 取引手数料率

山田さんは、成行注文で1 BTCをUSDTで購入するとします。山田さんが支払うテイカー手数料は、以下のように計算されます。 1 × 0.1% = 0.001 BTC

田中さんは、指値注文で42,000 USDTをBTCで購入するとします。田中さんが支払うメイカー手数料は、以下のように計算されます。 42,000 × 0.1% = 42 USDT

注文約定後:

山田さんは、1 BTCの成行注文で、0.001 BTCのテイカー手数料を支払う必要があります。取引手数料の自動差引後、山田さんは合計0.999 BTCを受け取ります。

田中さんは、指値注文で42,000 USDTを購入し、42 USDTのメイカー手数料を支払います。メイカー手数料の差引後、合計41,958 USDTを受け取ります。 

ただし、注文がキャンセルされたり、未約定に終わった場合、田中さんと山田さんは、取引手数料を支払う必要がありません。

現物取引のメリット

価格の透明性

現物市場価格は透明性が非常に高く、注文板で確認することができます。価格は市場の受給のみを基に決まります。これは価格が時間、資金調達率、金利など複数の要因に左右されるデリバティブ(先物、オプションなど)のような他の取引商品とは異なります。

分かりやすいプロセス

現物取引では、参入価格と現在の市場価格に基づいて、リスクとリターンを簡単に計算することができます。これは現物取引では、暗号資産を完全に所有するため、維持証拠金や金利の支払いといった要素を気にする必要がないためです。

簡潔性

上記の通り、マージン取引とは異なり、現物取引では、強制決済されたり、マージンコールを受けたりすることはありません。このため、現物取引は利益を確定するためにのみ介入し、ほぼ全自動で行えます。一方、暗号資産は価格変動が激しいので、レバレッジと証拠金を利用するデリバティブ取引では、強制決済されないように、常にポジションを監視する必要があります。

また、現物取引では、取引ポジションを常に監視せずに、いつでもポジションを建てたり、決済したりできます。 

比較的低リスク

現物取引は、デリバティブ取引に比べ、低リスクです。現物取引では、証拠金を使用しないので、元本を超える損失を回避することができます。

保有可能性

現物取引では、なんらかのレバレッジや証拠金を利用しないので、金利を支払ったり、証拠金を維持したりする必要はありません。よって、特定の暗号資産に対して断固とした自信があれば、価格が大暴落したとしても、引き続き保有することを選ぶことができます。

現物取引のデメリット

潜在的収益の限界

上記の通り、現物取引はレバレッジや証拠金を利用せず、保有資金額のみ使用します。よって、現物取引のポジションには上限があり、先物取引やマージン取引のように、より高額なポジションを建てることができません。このため、現物取引で期待できる収益には、限界があります。

市場流動性の不足によるスリッページ

現物市場の流動性は、時間が経つと枯渇する可能性があります。特に弱気相場では、市場の取引高が減少するため、小規模なアルトコインは流動性を大幅に失う傾向があります。

そうなると、流動性の不足によりスリッページが発生するため、暗号資産を適正な市場価格で売買することが難しくなります。この場合、公正な市場価格を下回る価格で暗号資産を売却するか、公正な市場価格を上回る価格で購入するか、あるいは今後、より優位な価格に推移することを願い、保持し続ける必要があります。

おわりに

総合的に判断して、暗号資産取引に現物市場を利用することは、希望価格で暗号資産を所有するとても良い方法です。すぐにリターンを得たい場合、現物取引の即時性は理想的なものです。これに対し、先物取引ではリターンを受け取れるまで待たなければならず、必要証拠金を失うリスクにも対処しなければなりません。