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先物取引とオプション取引、どちらがおすすめ?

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2023年2月23日

金融取引は非常に奥が深く面白いですが、金融商品にはさまざまな選択肢があるため、どれを利用するか迷っている方も多いかもしれません。先物契約とオプション契約は、レバレッジを効かせてリターンを狙える投資方法です。どちらもデリバティブであり、株式、コモディティ、仮想通貨などの原資産を利用して収益を増やせる金融商品です。しかし、これら2つの商品の仕組みは異なっているため、それぞれの投資目標に適した方を選択する必要があります。

この記事では、先物契約とオプション契約の違いを説明し、どのようなタイプの投資家に適しているか解説します。

仮想通貨の先物契約とは?

仮想通貨の先物契約は、原資産を将来の特定の期日に事前に決められた価格で売買する二者間の合意によって成立する契約です。先物契約では、実際に仮想通貨を所有することなく取引することができます。 

仮想通貨の先物契約は従来の先物契約と似た仕組みですが、原資産として仮想通貨を使用します。しかし、従来の先物契約とは異なり、暗号先物は高いボラティリティ、高いレバレッジ、そして24時間365日の取引が可能です。

仮想通貨の先物は、市場の上昇と下落から利益を狙うことができます。仮想通貨市場をよく理解し、多少のリスクを取ることができる人におすすめの投資方法です。

先物取引では、ロングポジションまたはショートポジションを建てることができます。価格の上昇を予測する場合はロングポジションは使用することが一般的ですが、反対に価格の下落を予測する場合はショートポジションを使用して利益を狙うことができます。

ポジションを満期日まで保有した場合、満期日の決済価格に基づいて利益または損失が決定します。この満期日の決済価格は、原資産である仮想通貨の現物価格によって決まります。満期日よりも前に先物ポジションを決済する場合、決済時の先物市場価格によって利益または損失が決定します。

現物やキャッシュの取引とは異なり、先物は通常「証拠金」で運用されるため、比較的少ない投資額で大きな利益を狙うことができます。

先物の証拠金には2種類あります。

  • 必要証拠金:ポジションを建てるために必要なキャッシュの最低金額のことです。

  • 変動または維持証拠金:原資産の値動きに基づいて必要証拠金を維持するために必要な金額のことです。

先物は通常(常にではありませんが)、指定された将来の日付(先渡契約)での資産価格に基づいて取引されます。

仮想通貨の先物契約の種類

標準的な先物契約 

従来の先物契約と同様に、仮想通貨の標準的な先物契約は、事前に決められた価格と期日で仮想通貨の取引を行います。また、満期日と決済メカニズムについても従来の先物契約と同様です。 

通常、満期日は1ヶ月ごと(シリアル)または3ヶ月ごと(四半期)に発生します。満期日を迎えるとポジションが決済されます(詳細は後述)。例えば、CME GroupはUSDで3カ月ごとに現金決済されるビットコイン先物契約の提供しています。

標準的な先物を取引する場合、以下の点に留意する必要があります。 

  • 長期保有を継続するには、満期日より前にポジションを「ロール」すること。

これを行うには、保有中の先物契約(前月)のポジションを決済し、それに対応する先物契約(翌月)のポジションを新たに建てる必要があります。 

もうひとつ考慮すべきことは、資産価格は通常、時間の経過とともに変化するということです。このような理由から、先物契約はフォワードカーブを用いて価格を決定します。

時間の経過とともに上昇すると予想される資産については、先物契約の価格も時間の経過とともに上昇します(コンタンゴ)。 

一方、下落すると予想される資産については、先物契約の価格も時間の経過とともに下落します(バックワーデーション)。このため、異なる満期日の価格が大きく変動する可能性があります。これによって特に契約の満期が近い場合(ランオフ)は、長期的なポジションの管理が難しくなります。

現物引渡先物 

現物引渡先物とは、原資産である仮想通貨が契約終了時に購入者に物理的に引き渡される先物契約のことです。このタイプの契約は、仮想通貨の価格変動に対する投機ではなく、実際に仮想通貨を所有したい人におすすめです。 

無期限先物(Perps) 

仮想通貨の無期限先物契約は満期日のない線形契約です。仮想通貨の標準的な先物契約と同様に、仮想通貨のロングポジションまたはショートポジションを建てることで、原資産を物理的に所有することなく価格変動から利益を得ることができます。しかし、従来の先物とは異なり、無期限先物には満期日がありません。 

無期限先物は、従来の先物契約と比較して以下の2つのメリットがあります。

  1. 契約が満期日を迎える前にポジションを繰り越す必要がなく、基本的なリスクを減らすことができます。

  2. 資金調達メカニズムにより、先物価格が原資産の現物価格内に収まることが保証されています。

例えば、Bybitの資金調達率は8時間ごとに設定されており、この資金調達率に基づいて、ロングポジションとショートポジションを保有するトレーダー間で定期的な支払いが行われます。どちらのトレーダーが支払うかは無期限先物の市場価格と現物価格との差によって決まります。

無期限先物の資金調達メカニズムによって、原資産価格に比べて先物価格が低い場合に先物を購入するインセンティブが与えられます。反対に、資金調達率が高いと先物を売却するインセンティブが与えられます。これはつまり、先物価格が原資産から大きく乖離した場合に、リスクのないアービトラージ戦略が可能になります。

例えば、BTCの資金調達率がプラス(ロング側がショート側に支払う状況)であれば、理論的には、BTCで先物契約を売り、さらに現物市場で同額のBTCを買うことで、ポジションをヘッジしながら資金調達料を受け取ることができます。このようなアービトラージによって、先物価格は原資産価格に固定されます。

インバース型先物契約 

インバース無期限契約は、BTCやその他の通貨を基軸通貨として使用できる契約です。異なる仮想通貨を担保として使用でき、証拠金や損益を線形無期限先物とは異なる方法で算出します。

先物契約の決済方法の種類

先物契約は通常、次の2つの方法のいずれかで決済されます。

  • 現物決済:満期日を迎えたら、原資産の受渡し(ロングポジション)または引渡し(ショートポジション)を行う必要があります。

  • キャッシュ決済:満期日を迎えたら、取引開始価格と契約決済価格の差額が投資家のアカウントから引き落とされるか、または入金されます。

注意:Bybitの無期限先物契約は、USDTまたはUSDCのキャッシュ決済に対応しています。

BybitでBTCUSDインバース無期限契約を取引したい方はこちら。

仮想通貨のオプション契約とは?

仮想通貨のオプション契約は、仮想通貨の先物と同様に、デジタル原資産の価値に連動する金融契約です。この契約は、トレーダーに将来の特定の期日で事前に定められた価格で資産を買うか売るかのオプション(選択肢)を与えます。ただし、仮想通貨の先物契約とは異なり、オプション契約の保有者はあくまで満期日に原資産を売買する権利を保有しているのであり、義務ではありません。 

仮想通貨のオプション契約を使用すると、損失リスクを軽減し、先物契約でありがちな強制決済のリスクも回避することができます。その対価として、購入者はオプションのライターに返金不可の初期手数料またはプレミアムを支払う必要があります。

仮想通貨向けのオプション契約にはさまざまな種類がありますが、一般的にはコールオプションとプットオプションという2種類の契約が使用されます。

オプションの種類:コールオプションとプットオプション

コールオプション(コール)では、事前に決められた期日と価格(行使価格)で原資産を買うことができます。反対に、プットオプション(プット)は、原資産価格が下落した場合に購入者に利益をもたらします。プットオプションもコールオプションも、あらかじめ決められた価格(行使価格)が設定されており、契約満期日前または契約満期日にオプションを行使することができます。

オプションの購入者は、「オプション・プレミアム」と呼ばれる手数料を販売者に支払います。このプレミアムは、オプションの購入者にとっての潜在的な最大損失額となります。一方、プレミアムは販売者にとって潜在的な最大収益額となります。

例えば、ある経験豊富なトレーダーがBTC価格が上昇トレンドにあると確信し、行使価格50,000ドルのコールオプションを購入したとします。予想通りBTC価格が上昇して60,000ドルに達した場合、オプションを行使して50,000ドルでBTCを購入し、60,000ドルで売却して利益を得ます。 

逆に、予想に反してコールオプションの満期日にBTC価格が3万ドルまで下落した場合、オプションの権利を行使しないことも可能です。しかし、プレミアムは放棄しなければなりません。

一方、プットオプションでは、購入者は契約満期日前に事前に決められた価格で資産を売却することができます。

例えば、市場の下落を恐れてヘッジ目的で行使価格3,000ドルのETHのプットオプションを購入したとします。もしETHの価格が2,000ドルまで下落した場合、3,000ドルでETHを売却するオプションを行使して損失を軽減することができます。

例:

BybitのUSDC建てBTCオプションを使って上記の取引を実行するための手順は次のとおりです。

ステップ1:ウェブ版の場合、まずBybitの公式ウェブサイトにアクセスします。「デリバティブ」からUSDCオプションを選択し、次にBTCオプションを選択します。

出典:Bybit

ステップ2:表示したくない満期日を選択解除します。または、複数の満期日を同時に表示することもできます。

ステップ3:満期日の隣にあるドロップダウンリストから、表示したい行使価格の数を選択します。

出典:Bybit

ステップ4:オプションの種類「コール」または「プット」を選択します。

コールオプションはオプションチェーンの左側に、プットオプションは右側に表示されます。利用可能なすべての満期日はオプションチェーンの上部に表示されます。

ここでは、オプションのビッド・アスクスプレッド、取引高、デルタ計算、さらにポジションを保有している場合は現在のポジションを確認できます。

ステップ5:表示したい行使価格をクリックすると、ページの右側に注文発注画面が表示されます。ここでは、注文板の厚みとともに、選択した行使価格のIV、デルタ、シータ、ガンマ、ベガの計算結果が表示されます。

価格または希望のIVレベルを選択して発注を行います。

発注の手順は以下のとおりです。

  1. 方向(買いまたは売り)を選択します。

  2. 注文価格またはIVを入力します。

  3. 注文数量を入力します。

  4. ポストオンリーを選択します(任意)。

  5. 上記のステップを完了したら、「注文を発注する」をクリックします。

出典:Bybit

ステップ6:その後、確認画面が表示されます。

入力した情報に誤りがないか確認したら、「確定」をクリックして注文を送信します。

出典:Bybit

オプションを使うべきタイミング

オプションの利点は、どのような相場でも利益を狙えることです。原資産価格がどのような状況であったとしても(上昇、下落、あるいは横ばいであっても)、その状況に応じたオプション戦略を利用できます。

ただし、オプション契約で考慮すべき点は値動きだけではありません。単に価格が上がるか下がるかを考えるだけでなく、「満期日までに価格はどう動くか?」を検討する必要があります。

先物取引とオプション取引の類似点

先物とオプションはいくつかの重要な違いがありますが、共通点も複数あります。先物もオプションも、実際の資産(例:仮想通貨)を所有することなく、その資産に関連する取引ができる金融派生商品です。そのため、仮想通貨の購入や保管の手間に煩わされることなく、仮想通貨を利用した取引ができます。

また、リスクをヘッジする手段(相殺する2つのポジションを建てることで、損失を最小限に抑えるリスク管理の方法)として先物契約やオプション契約を利用することも可能です。

さらに、先物契約もオプション契約もレバレッジを使用できます。レバレッジを使用すれば、少ない資本で原資産を利用して大きな取引を行うことができます。しかし、レバレッジを使用する取引はリスクも高くなるので注意が必要です。

先物取引とオプション取引の違い

次に、先物契約とオプション契約の違いを説明します。この2種類の契約の主な違いは、「義務」があるかないかです。先物契約は原資産を法的に必ず取引しなければならない契約であるため、合意した価格と期日で契約を必ず履行しなければなりません。一方、オプション契約の場合、売買する権利はありますが義務ではなく、予想外の価格変動でポジションが不利になった場合、契約の履行を拒否することができます。

両者のもう一つの大きな違いは、「リスクプロファイル」です。先物契約の場合は、ウォレット残高が未決済ポジションの証拠金残高を下回った場合、ポジションが強制決済されるリスクがあります。反対にオプション契約の場合は、あくまで原資産を購入する権利を保有しているのであり、購入する義務はないため、購入した場合のリスクは比較的制限されます。オプション契約のリスク要因は、原資産の価格変動にかかわらず、契約に対して支払ったプレミアムのみとなります。

最後に、先物契約とオプション契約では手数料体系が異なります。オプションの購入者は販売者にプレミアムを支払わなければなりません。このプレミアムとは、原資産を指定日以前に事前に決められた価格で購入する権利に対する手数料です。一方、先物契約の場合はポジションの購入手数料は必要ありません。ただし、取引所によっては取引手数料や資金調達率など、さまざまな手数料が発生する場合があります。

先物やオプションの著名な投資家たち

個人投資家、機関投資家、ヘッジファンドなど、さまざまなトレーダーが先物契約とオプション契約を活用しています。先物契約で世界的に有名なトレーダーには、リー・スターン、ポール・チューダー・ジョーンズ、ジョージ・ソロスなどがいます。

リー・スターンは1947年に航空会社を退社後、投資家としてのキャリアをスタートさせました。彼はシカゴ取引所で最も長く活躍したトレーダーであり、特にコモディティ市場(穀物、金、原油、債券など)の取引を得意とします。

ポール・チューダー・ジョーンズは、1987年のブラックマンデーを見事的中させて一躍有名となった先物トレーダー兼ヘッジファンド・マネージャーです。80年代にチューダー・インベストメント・コーポレーションを設立したジョーンズは、逆張りの投資戦略を活用した先物市場での取引を得意とします。

そしてもう一人、忘れてはいけない有名な先物トレーダーと言えば、「イングランド銀行を潰した男」として知られるジョージ・ソロスでしょう。イギリスポンドの空売りで数十億ドルを稼ぎ、世界三大投資家の一人としても知られています。

オプション市場の有名なトレーダーには、アンディ・クリーガー、カール・アイカーン、ジョン・ポールソンなどがいます。 

アンディ・クリーガーは、世界で最も成功したオプション・トレーダーの一人として知られています。彼は1980年代後半に、ニュージーランドドルの投機に成功するなど、外国為替市場の天才トレーダーとして名を馳せました。型破りでアグレッシブな取引スタイルで知られ、卓越したスキルと度胸のあるトレーダーとして高い評価を得ています。

カール・アイカーンは有名なアクティビスト兼オプション・トレーダーです。株価が割安な企業に注目して大きなポジションを取り、株価を押し上げるような経営改革を推し進めることで利益をあげる手法で知られています。特にオプション取引戦略を駆使して数々の成功を収めてきました。

ジョン・ポールソンも著名なオプション・トレーダーの1人です。彼は2007年に不動産市場におけるショートで150億ドルを稼いだことで良く知られています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、当時の取引を「史上最高の取引」と評しています。

先物とオプション、どちらがおすすめ?

先物契約とオプション契約のどちらを選択するかは、リスク許容度、取引経験、投資目的など、いくつかの要因を考慮する必要があります。

リスク許容度

先物契約には原資産を購入するという義務が含まれているため、オプション契約に比べて強制決済のリスクが高くなります。オプションを購入する場合はリスクが限定的ですが、売る場合には無限のリスクが伴うので注意が必要です。

取引経験

先物取引もオプション取引も、損益、必要証拠金、関連リスクなどを理解している上級者のトレーダーに適しています。オプションの特性とリスクを正しく理解していれば、複雑なオプション戦略を低リスクで設定することができます。先物契約は、市場の専門知識と確かなリスク管理戦略を持っている投資家の方におすすめです。 

投資目的

先物契約は、短期的な価格変動を活用して、レバレッジありのロングポジションとショートポジションをすばやく取引することで利益を増やします。さらにハイリスクハイリターンな投資をしたい場合は、先物とオプションの両方が役立ちます。オプションは、市場のボラティリティを利用した複雑な投資戦略によく使われます。また、市場のボラティリティをヘッジし、ポートフォリオのリスクを管理する方法としても役立ちます。

先物はオプションより優れている?

先物がオプションより優れているかどうかは、投資目的によって異なります。シンプルに取引がしたいなら先物がいいでしょう。より自由度の高い取引がしたいなら、オプションの方が良いかもしれません。

先物とオプション、どちらが安全?

先物もオプションもリスクは伴いますが、先物の売買にはより大きなリスクが伴います。一方でオプションの場合、購入者のリスクは常に支払ったプレミアムのみに限定されます。

おわりに

先物契約とオプション契約にはそれぞれ状況にあった使い方とメリットがあります。どちらを選択するかはリスク許容度、取引経験、投資目的などいくつかの要因を考慮して決める必要があります。また、これらの金融商品を取引する前にリスクを十分に理解し、適切なリスク管理戦略を準備する必要があります。これらの条件を十分に検討し、専門家からのアドバイスを受けることで、自分にピッタリの金融商品を選ぶことができます。

免責事項:本記事は学術的な情報の提供のみを目的としています。取引や投資を行う前に専門家からのアドバイスを受けるようにしてください。すべての取引商品について、ご自身で調査とデューデリジェンスを行うようにしてください。 

#Bybit #TheCryptoArk