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BlackRockのビットコインETF:その実態とビットコイン価格への影響

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仮想通貨
27 жовт 2023 р.

2017年、BlackRockのCEOであるLarry Fink氏は、ビットコインを「マネーロンダリングの指標」と呼びました。しかし最近、この資産運用会社がビットコイン現物ETFの申請を発表したことで、潮流は確実に変わってきています。最近ビットコイン価格が急騰している原因は、BlackRockのような数兆ドル規模の資産運用会社がビットコインに対して強気の姿勢に転じたからです。有名な金融機関が仮想通貨に投資する意思を明らかにしたのはこれが初めてではありませんが、BlackRockほどの巨大な資産運用会社が大衆市場におけるビットコインの流通量を増やそうと動いたことは驚きに値します。

従来のファイナンスや仮想通貨の世界をさらに不透明にするこの新しい刺激的な進展は、仮想通貨にとって吉と出るのか、凶と出るのか? この記事では、ビットコインETFについて掘り下げ、BlackRockの現物ETFが従来のビットコイン先物ETFと異なる点をご紹介します。

この記事のポイント

  • ビットコインETFは、ビットコイン価格に連動し、従来の取引所で取引可能な上場投資信託です。

  • 1988年に設立されたBlackRockは、世界最大級の資産運用会社です。

  • BlackRockのビットコイン現物ETFでは、投資家は実際のビットコインに対して直接エクスポージャーを取り、ビットコインデリバティブではなく実際のビットコインに投資できます。

ビットコインETFとは?

ビットコインETFは、ビットコイン価格に連動し、従来の取引所で取引可能な上場投資信託です。ビットコインを所有することに起因する保管やセキュリティの問題に対処する必要性が低減されるため、通常、仮想通貨の取引に不安を覚える投資家にとってのオルタナティブ投資と考えられます。

これまで、米国証券取引委員会(SEC)はビットコイン先物ETFのみを承認しており、ビットコイン現物ETFは承認されていませんでした。BlackRockがビットコインETFの申請を発表しても、一般的なリテール投資家はそこまで歓喜していないかもしれません。ただ、ビットコインに対してエクスポージャーを取る選択肢が広がるため、機関投資家にとっては喜ばしいニュースとなるでしょう。なぜなら、プロの投資には通常、ビットコインに直接投資することを禁止する特定の指令や規則が出されているからです。大規模な投資家による買い入れがどのような影響をもたらすかは、後ほど詳しくご説明します。

BlackRockとは?

最近のビットコインETFの申請やデジタル資産の世界への参入の動きが報じられ話題となっていますが、BlackRockは従来のファイナンスの世界において常に大きな影響をもたらしてきました。資産運用会社の観点からみても、実に数兆ドル規模の運用資産を有していて世界最大級といえます。

1988年に設立されたBlackRockは、世界中のファンド投資家、年金ファンド、政府、企業、金融機関に幅広いサービスと商品を提供しています。その規模と従来のファイナンスにおける存在感により、BlackRockはビットコインETFの申請をしたことで、仮想通貨投資において最も影響力のある会社の1つとなる可能性があります。

BlackRockのビットコインETFとは?

競合相手と同じように、BlackRockのビットコインETFは、人気の高いビットコインの価格に連動します。ただし、BlackRockのビットコインETFは、現物ETFであるという点で他とは異なります。つまり、BlackRockのビットコインETFを購入する投資家は、先物やスワップなどのビットコインデリバティブではなく、実際のビットコインに対するエクスポージャーを直接取り、実際のビットコインに投資できるようになります。

詳細を掘り下げる前に、現物ETFのしくみを理解することが重要です。現物ETFを商品として成立させるには、原資産を物理的に所有し、原資産による裏付けを得る必要があります。つまりビットコイン現物ETFの場合、ビットコインを提供する金融機関は、提供するビットコインに相当する金額のビットコインを所有し、公開取引されるBlackRockのビットコインETFの各シェアを表示するために準備しておく必要があります。

BlackRockのビットコイン現物ETFのしくみ

ビットコイン現物ETFを組成するにあたって、BlackRockはまず、投資家のために裏付けとなるビットコインを保管する銀行やその他の金融機関にカストディ口座を開設します。保管機関は、投資家を代理してファンドの資産の管理、保管、保護につき責任を負います。

これにより、投資家は仮想通貨それ自体を購入したり保管したりすることなく、ビットコインにアクセスできます。また、投資家は多額のビットコインを一度に売買する必要がないため、市場の流動性が高まります。

全体を見ればこれらの特徴は些末に思えるかもしれませんが、機関投資家による仮想通貨投資に大きな影響を与えます。それについては、次のセクションで取り扱います。

BlackRockのビットコインETFが注目されている理由

仮想通貨取引および投資の初心者は、なぜ投資家がBlackRockによるビットコインETFの申請に期待を寄せているのか疑問に思うかもしれません。プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF(BITO)やヴァルキリー・ビットコイン・ストラテジーETF(BTF)などのビットコインETFがすでに存在しているのですから、別のビットコインETFに熱狂する理由はないように思えるでしょう。

これには、機関投資家による買い入れの流れと一括買いが関与しています。

BlackRockは、現物ビットコインETFを発行する際に準備金としてビットコインを購入する必要があります。BlackRockは数兆円規模の運用資産を抱える資産運用会社であるため、ビットコインの準備高を蓄積していくにつれ、ビットコインの購入量が急激に増える可能性があります。また、ビットコイン現物ETFの申請が発表されたことにより、FOMO(取り残される恐怖)の影響や仮想通貨に対する未実現利益の恐れにより、投機筋が時流に乗って買い入れを行う可能性もあります。これら2種類の狂乱的な買い入れにより、もし規制機関がBlackRockのビットコインETFを承認すれば、BTC価格が急上昇する可能性があります。

上記はすべて好ましいことのように思えるかもしれませんが、大きな問題が1つあります。それは、BlackRockの現物ビットコインETFが規制機関により承認されなかった場合、この熱狂がすべて無駄になってしまうことです。

ありがたいことに、BlackRockは今まで広範かつ見事に法規制の承認を得てきた実績があります。500種類超のETFの承認を得て、自社商品に対する市場の需要に応えてきた実績から、BlackRockは市場に資金を流入させる際に規制環境を切り抜ける優れた能力を示してきました。この巨大な資産運用会社が数ヶ月以内にETFのローンチを発表するとの期待が投機筋の間で高まる中で、最近ビットコイン価格が急激に回復したのは主にこの評判が大きな理由です。

ビットコイン価格への影響

BlackRockのビットコインETFがビットコイン価格に与える潜在的な影響。出所:Bybit

上述のとおり、BlackRockのビットコインETFは、市場における最初の仮想通貨現物ファンドとなる可能性があります。これは、ビットコイン先物ETFを提供する他の市場とは異なります(ビットコイン先物ETFは、実際のビットコイン価格ではなくビットコイン先物契約の価格に連動するため)。この画期的な商品による影響は計り知れません。機関投資家はビットコインそれ自体の購入や運用を行わずにビットコインに対するエクスポージャーを取ることが容易になるため、仮想通貨領域への投資に新たな旋風を巻き起こすでしょう。たとえば、機関投資家がビットコインの準備高を蓄積しようとしたり、手法や知識を有しないリテール投資家がFOMOを感じてデジタル資産を自ら購入して運用したりすることが考えられます。

2023年6月16日にETFの申請が発表されてから、ビットコイン価格は25,000ドルから30,000ドルへと爆発的に上昇しました。最近は値動きが激しいため、BTC価格に疲弊サインが現れ、短期的には何らかの形で価格修正されるでしょう。弊社では、ビットコイン価格は30,000ドル台を再度試すと予測しています。この価格は以前供給ゾーンでしたが、これは軽々と突破され、現在ではビットコイン購入者の需要ゾーンとなっているためです。

長期目線では、BlackRockのビットコイン現物ETFが承認された場合、狂乱的な買い入れが再び起こると予想されます。弊社では、ビットコイン価格が35,000ドルから40,000ドルとなると予測しており、仮想通貨のリテールトレーダーが短期的な利益を得ようとするでしょう。ただし、規制機関がETFの申請を却下した場合、仮想通貨のリテールトレーダーが保有するビットコインをパニック売りすることで大量売りが発生し、ビットコイン価格は25,000ドルに向けて下落する可能性があります。

BlackRockのビットコイン現物ETFとビットコイン先物ETFの比較

ビットコイン現物ETFとビットコイン先物ETFでは、所有権がその大きな違いになります。現物ETFを提供する機関はビットコインを準備金として所有しなければならず、投機筋の売買に左右される先物契約の価格とは異なり、実際のビットコイン価格に直接連動します。したがって、未来のある時点におけるビットコインの推定価額について合意された契約に依拠するのではなく、現物ETFは、現在の市場価格を用いて現在仮想通貨領域で起こっていることをより正確に反映します。

ビットコイン先物契約における価格付けはマイナス面というわけではなく、ビットコイン先物ETFの購入者は別の視点を有していると言えます。ビットコイン先物ETFは、あらかじめ決められた満期日と固定価格で合意された契約に結びついているため、ビットコインの変動によるリスクをあまり取りたくない投資家に保守的な安定性をもたらします。

BlackRockのビットコインETFはよい投資となるか?

BlackRockのビットコイン現物ETFの主要ターゲットは、規制により拘束される機関投資家と、仮想通貨の購入経験の少ないリテール投資家であると考えられます。したがって、仮想通貨に精通した投資家や投資を念頭に置くトレーダーは、連動エラーや運用手数料、流動性が低いことによるスプレッドの悪化が生じる可能性があるため、実際のビットコインを購入するほうがよいかもしれません。ただ、突如として取引機会が生じたのですから、BlackRockのビットコインETFの売買を少しだけでも行うことは損にはならないでしょう。いつも言われることですが、BlackRockのビットコインETFを含め、仮想通貨に投資する際には自らリサーチしましょう。

おわりに

ビットコイン現物ETFが市場に導入されるまでの道のりは長いものでしたが、BlackRockのような巨大企業が参入することで導入が成功すれば、未来のデジタル資産商品への道が開けるかもしれません。運用手数料や連動エラーを考えると、ビットコインのリテール投資家にとっては、引き続きDCA(ドルコスト平均法)を取り入れて仮想通貨投資をした方がよいかもしれません。一方で、BlackRockビットコインETFの承認は、さまざまな金融機関が仮想通貨市場に積極的に参入し、主要メディアが報じるように仮想通貨シーンに将来性がないというのは現実からは程遠いというメッセージとなるでしょう。

この観点では、BlackRockのビットコインETFは、仮想通貨業界に対して強気の姿勢であると言えます。ETFなどの商品の組成を支援することで、規制機関は仮想通貨投資に関する標準手順を策定でき、一方で投資家の資産にさらなる保護を提供します。これにより、仮想通貨業界に正当性がもたらされ、潜在的な参入者にさらなる信頼性を与えることになるでしょう。